口腔ケア

歯科医院へ行くときに、大人になっても気分はブルーになるものです。麻酔治療をした後には、口の周りが麻痺しているのでヨダレが出たり、もちろんどんなに美味しい物をいただいても味がぜんぜん分かりません。

いわゆる大人(成人)の90%以上が、虫歯の治療経験があるといわれています。そして、40パーセントの割合で虫歯の原因のために、歯を抜かれています。(経験ありの方が多いのではないでしょうか?)

そして、大人で気を付けなくてはいけないのが歯周病です。大人はとかく歯周病がクローズアップされていますが、大人の虫歯はとても多いのです。そして、年齢が高くなるほど、虫歯を持っている人も多くなっています。その反対に、子どもの虫歯は減ってきています。平成11年の文部科学省の調査発表によると、中学1年生1人当たりの虫歯の本数は1.2本となっていてその数値は過去の統計の中で、一番少ない数値になっていました。調査を始めた1984年には一人当たり4.75本だったので、かなりの減少といえるでしょう。

このような効果が上がった背景には、学校での歯みがき指導と、幼児発育測定などで虫歯をつくらないように母親指導がよくされていたことにより、子どもを保育する側が虫歯に対しての理解を深め、幼児期に虫歯を作らないように幼児や子供に対して「仕上げ磨き」をしている効果があると思います。

子供の虫歯は減っていますが、大人の虫歯は減っていません。大人の虫歯の特徴はどのようになっているのでしょうか。

まず、大人の虫歯も子供の虫歯と同じように、歯のみぞや、歯と歯の間、歯ぐきに接している部分など、磨き残しが原因の虫歯です。その他に、虫歯の治療した部分の詰め物と歯の間です。歯の詰め物と歯の間に、隙間が少しでもあるとそこから細菌が侵入してしまいます。そこから虫歯になってしまうのです。そして困ったことに、歯の治療がしているのでより歯の奥深くへと侵入していってしまいます。そして、神経に達してしまう虫歯の原因にもなってしまい、せっかく治療した歯がダメになってしまいます。神経に触れることで痛みが増すため、歯の神経を抜いて治療を行うことが多いのですが神経を抜いてしまったがために、痛みに気づくことが遅くなってしまい虫歯はますます進行してしまっている。というケースが多いです。そして、大人は子どもと違い歯周病というリスクも抱えている年代でもあります。

歯周ポケット(歯とハグキの境目の溝)で歯周病チェックをするのですが、健康な歯ぐきで1~2mm、中程度の歯周炎があると、3~5mm、歯周病が進行した場合は6mm程度になりますが、50代で歯周ポケットが6mmになっている人は約60%とも言われています。

そして、歯周病によって歯の根元の部分(根面)に発生する虫歯も大人の虫歯に多いケースです。根面部分は、歯の表面になるエナメル質とは違い象牙質で覆われていて、硬度もエナメル質より低いので、よけい虫歯にもなりやすいといえます。このようなケースの虫歯は高齢者に多く見られています。奥歯ではまず発生が見つけにくいという点と、高齢者は唾液が減少しているので口の中が唾液で流されることも少なくなっているので、食べ物や糖質類がいつまでも口内にとどまってその結果虫歯へ発展している。といえます。

子どもの虫歯は減少傾向になっていますが、大人の虫歯が増加していることに、大人の虫歯予防ケアとして口腔ケアの実施の高まりが見られています。

そして、歯周病や虫歯は口臭の元にもなります。 口臭の原因には食べ物などの原因の他にもいろいろ原因がありますが、歯学的から見地での口臭は、特定の細菌の繁殖と、歯石が多く付着している場合にも臭いは強くなります。

そして、口臭のある虫歯の場合は虫歯の進度も早いので、注意が必要です。口臭対策としては、歯ブラシ・歯間ブラシ・洗口液(マウスウォッシュ)で歯を磨くだけではなく、舌や歯垢を洗い清潔な状態に保つ必要があります。舌たに付着する苔(こけ)状のものを舌苔(ぜったい)と呼んで、舌苔を除去する舌ブラシも販売されています。

口腔ケアの必要性

虫歯だけではなく、口腔ケアの高まりの背景には、高齢社会ということもあります。高齢者が増加することによって「口腔ケア」という言葉も生まれました。口腔ケアをすることによって、得られることとしては「口腔内を清潔に保つこと」「誤嚥性肺炎の予防」「生活の質(QOL)の向上(Quality Of Life)」があげられています。

誤嚥性肺炎とは、本来器官には本来入るべきではない(口や胃の中の食物や唾液、分泌物)ものが、誤やまって期間や肺に入り、そのことが原因となり引き起こされる肺炎です。口腔内に存在する細菌なども食物や唾液などと一緒に気管や肺に入ってしまうために、菌が増殖しやすい状態になってしまいます。そして、だいたいにして誤嚥してしまうのは、高齢者が多いため、高齢者の肺炎で多くなるのが「誤嚥性肺炎」です。高齢者は免疫力が低下していたり、嚥下や咳反射などの各機能が低下している場合には、肺炎を引き起こすリスクが高くなってしまいます。

そして、本人も自覚がない状態での誤嚥もあります。それは寝ている時です。寝ている時に、少量の唾液や胃液などが気管に入ってしまいます。自覚がないため、繰り返し発生してしまうこともあります。誤嚥そのものを減らすことが難しくなっていますので、誤嚥を減らすことに注意するよりも、口腔ケアを行うことによって、いかに細菌や食べかすを減らすべきか。いかに口腔内の清潔を保つか。ということで、効果をあげることができます。

口腔内細菌

お口の中にはたくさんの細菌がいます。およそ300種類以上の細菌が存在しているといわれています。そして歯石(プラーク)1ミリグラム中には、1億個以上の細菌が存在しているともいわれています。そして、虫歯を誘発する細菌は、酸を産出して虫歯を誘発していきます。

口腔微生物によって全身疾患との関係

原罪、口腔微生物と全身疾患の関連性の研究が盛んに行われています。そして、数多くの研究報告がなされていますが、完全に関連性が解明されている分野でもないので、今後の研究の成果が期待されています。

関連性のある疾患

  • 関節炎
  • 糸球体腎炎 (腎疾患のひとつ。腎臓の炎症のひとつです。)
  • 皮膚炎
  • 骨粗鬆症
  • 肥満
  • 妊娠・出産障害
  • 循環障害
  • 細菌性肺炎 (細菌性肺炎には歯周病の原因として考えられている嫌気性菌が関与しています。)
  • 細菌性心内膜炎
  • 糖尿病
  • バージャー病 (日本では14番目の難病指定(特定疾患治療研究対象疾患)されています。2005年、東京医科歯科大学医学部血管外科と歯学部歯周病学の共同グループによって、歯周病菌がバージャー病との関連性をアメリカの血管外科専門雑誌に報告しました。治療の他にも、歯周病治療と、口腔内ケアの徹底が望まれています。)

口腔ケアの物はどのようなものがあるのでしょうか?!

歯ブラシ・爪楊枝・糸ようじぐらいは、馴染みがあるとおもいます。歯ブラシの種類の中にも、いわゆる普通の歯ブラシの他に、赤ちゃん用の歯ブラシや電動歯ブラシ、介護用歯ブラシ・360度歯ブラシなどもあります。その他には、デンタルフロス・インタースペースブラシ・ワンタフトブラシ・ウォーターピックなどがあります。

そして歯ハミガキの種類もいろいろあります。液体歯ミガキや洗口液・マウスウォッシュに歯槽膿漏治療薬などもあります。

高齢者へ口腔ケアをするやり方

自分でできる口腔ケア

  • 歯磨きを徹底する
  • 緑茶や、イソジンでのうがいの徹底
  • 義歯を手入れする
  • 体力をつけること。低栄養や水分不足は禁物。
  • 食べる前に嚥下体操で準備運動をする。(食事の時に時々むせたり、なんとなく飲み込みにくいと感じるならば食事前の嚥下運動をすることで、「食べること」に関わる筋肉の動きが良くなります)
  • 食べた後に、すぐに横にはならないこと。(食後すつに横になると、胃食道逆流現象がおきます。胃液や胃に入った食べ物が逆流して誤嚥することがあります)
  • 食事の際、姿勢に気を付ける。(正しく座って食べる)
介護者ができる口腔ケアとその手順

準備する物:歯ブラシ・コップ・タオル・おしぼり・ボール・吸い飲み・水差し・巻き綿棒(割り箸に綿花とガーゼを巻いた物)数本・歯磨き粉・洗口剤(マウスウォッシュ)など。

1.全身の状態を確認して、お口の中を観察します。その時には、歯磨きに必要な物を準備しておいて、これから、歯磨きをすることを伝えます。

2.介護を受ける人が疲れないような、安定感のある姿勢にします。介護ベッドの場合は、頭の部分を30度ぐらいあげておきましょう。

3.介護を受ける人の襟元が濡れないように、胸元にタオルをかけましょう。前面介護する場合には、頭部下にビニールシートとタオルを敷きます。布団や枕などをぬらさないように気をつけましょう。介護者の入れ歯をしている場合は、入れ歯を外して、入れ歯専用のケースか何か入れ歯を入れる器に入れておきましょう。

4.そして、介護者にコップもしくはストロー、吸い飲みなどではじめにブクブクうがいをしてもらいます。すすいだ水はボールに入れてもらいましょう。吐いた水がこぼれないように、ボールの端をピッタリ口元に添えて吐いてもらいます。間違って水を飲み込んだり、むせないように顔を横に向けてゆっくり行います。介護者が自分で水を、口に含めない場合は、少量づつ吸い飲みや注射筒などでお口の中を洗浄するか、巻き綿棒でこすって清掃します。

5.巻き綿棒や歯ブラシをコップの水で洗いながら繰り返していき、歯磨きを行っていきます。コップの水が汚れたら、新しい水に取り替えましょう。

6.歯みがきが終わったら、温かいタオルで介護者の顔を拭きます。お口の中もさっぱりしますし、お顔を拭くことでさらにすっきりとした感触になります。胸元のタオルや頭周りのシートなどを取り除きましょう。介護者がリラックスできる姿勢になってから、歯みがきで使った用具をかたずけます。

7.外してあった入れ歯を洗います。洗って軽く水分をタオルで拭いてから、入れ歯をはめさせます。就寝前の歯みがきの場合は、入れ歯を専用ケースか器に入れて保管しましょう。